MSE法とは


MSE試験評価法の概要

 MSE法は、長年摩耗とエロージョンを研究してきた福井大学岩井善郎教授が原理と手法を着想・具現化し、 共同研究を継続実施してきた㈱パルメソにおいて試験装置が開発され、現在に至っています。
 水に微小な標準粒子(MSEの基準粒子)を混在させたスラリーを高精度なウェットブラスト技術を用いて試料表面に投射します。 標準粒子は、1.2μmのアルミナ粒子としていますが、種々の材質やサイズの粒子を評価サンプルに対応させて使いわけます。 大量の標準粒子(数億個/秒)が高速(最大100m/s程度、時速に換算すると360km/h)で投射されます。粒子の衝突によって表面に発生する (標準粒子1個の衝突深さは10~50nmと推定される)マイクロ・ナノスケールのエロージョンは材料の表面の強さや変質・劣化と相関があることから、 エロージョン量を高精度で計測(分解能10nm)することにより、表面から内部までの特性をシームレスに評価することができます。


MSE試験法の原理


i-MSE (innovative MSE) 法とは


 従来のMSE 法は、投射ノズル中心位置におけるエロージョン深さの測定による一次元(線)での評価です。 しかし、薄膜や表面処理材の内部は均一でないことことも多く、広い領域を対象として「面」で評価できれば、さらに有用な評価手法になります。  そこで、MSE 試験による投射面の断面形状曲線のデジタルデータから広い領域における各深さ位置での局所的なエロージョン進展速度を求めます。 これをエロージョン痕の形状プロファイルに加えて描画(レンダリング)し、材料内部の強さに分布による微細構造を画像として可視化する新たな手法が i-MSE (innovative MSE) 法です。  i-MSE 法は、硬質皮膜のみならず樹脂皮膜の内部構造や基材との密着性の評価、あるいは各種バルク材料、複合材料等の表面・内部の局所強さと微細構造、 内在する欠陥・析出物や不均一性などの解析・評価の新しいツールとして様々な分野・領域で貢献できるものと考えます。



i-MSE法のフロー








 i-MSE法の原理や手法の詳細は、下記のYoutubeをご覧下さい。

なお、これらのYoutubeは、JAIST主催のMatching HUB Hokuriku 2022(2022年11月18日金沢市)、Matching HUB Hokuriku 2023(2023年11月10日金沢市)にて一般公開したものです。

評価特性

  • 強度比較(基材とコーティング膜、同一材料、異種材料、等)
  • 深さ方向の強度分布
  • 多層膜の各層ごとの厚さ、表面改質層の厚さ、等
  • 界面部の強度、密着層の特性
  • 表面の変質・劣化状態、等


アプリケーション

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用途

【評価】
  • 表面のナノ・マイクロスケールの強度特性評価
  • あらゆる薄膜や材料の表面および内部方向の特性評価
  • 劣化診断
  • 品質検査、等
【加工】
  • 精密表面加工(テキスチャリング)
  • 表面除去加工、等

対象材料

  • 硬質薄膜(PVD/CVD膜、例えば、TiN、TiC、TiCN、CrN、DLC、等)
  • 軟質薄膜(塗装、カラーフィルター、光学膜、ITOフィルム、等)
  • 多層膜(工具コーティング、光学レンズコーティング、等)
  • 各種表面処理材料(焼入れ、窒化、めっき、化成被膜、傾斜膜、等)
  • バルク材(Siウェハ、Al、SUS、SK85、サファイア、超硬合金、等)
  • 樹脂系材料(Si、ポリイミド、PET、PEEK、PTFE、等)
  • ゴム系材料(フッ素ゴム、天然ゴム、ウレタンゴム、エラストマー、等)
  • セラミック系材料(CBN焼結体、ダイヤモンド焼結体、等)
  • その他、高分子膜、太陽電池薄膜、液晶保護フィルム、バイオ膜、等